読書感想「「先生、できました!」―子どもの無限大の能力を伸ばし、笑顔を作る方法 」
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購入:2014年1月11日 1,365円
読了:2014年1月12日
その広告欄に、本書の広告が。
卓球の練習方法だったり、卓球の選手を紹介したりする本の中にまぎれてあきらかに異質です。
わたしが、教師だからということで自然に目がいったのでしょう。
子どもとの接し方、付き合い方を書いた本だ、と。
子どもとの接し方といえば、コーチングだったり、カウンセリングだったりと基本、技術を前面に出した本、そして、心理学などのように構造を書いた本、などがあります。 そこに加えて、(特にスポーツ)著名な方が自分が選手だった時、そして、監督になった時の指導法、考え方、接し方があります。
あまりにも、自分とかけ離れてプロフェッショナルすぎると、偉大すぎて参考にならないのですが、うまく自分が考えていることにフィットする考え方だったりすると、我が意を得たり!という気持ちになります。
帯に、「教えない指導が子どもを変える!」とあるんです。興味あるでしょ?
で、本書。
著者の大橋さんは北海道、長万部の中学校の校長先生です。
卓球部の指導者として、過去に何度も北海道チャンピオンを育てたり、全国大会に連れて行ったりしています。
この「卓球王国」の編集者は、当初、卓球の指導を取材に訪れたという。その時に衝撃を受けたらしい。
それは、子どもたちのとびきりの笑顔と元気のよさにという。編集者は言う。
「こんな風景は見たことがない。強豪チームというのはどこでも、ピリリとした緊張感を放ち、監督、先生という人は威厳を保つように怖い表情でいるものだから」
帰り、大橋ファンになってしまった編集者はこんなことえお思う。
「大橋さんの卓球本だけでなく、教育本をつくりたい」
大橋さんにも興味を持ったけれど、上のように考える編集者がすごいと思ってしまった。だtれ、卓球情報誌の編集者である。教育本という発想が出てくるのがすごい。たぶん、この方の頭の中は卓球よりも大きな範疇で物事を、仕事を捉えているんだろうな。
実際の内容は、その都度の考え方、エピソードが中心に語られているので、子どもといかに接していくかという技術を学びたい人にとっては物足りないかもしれない。
しかし、技術は何のためにあるのか。それは、考え方を実現させるために、である。一度この本を読んでおくと良いのでないかと思う。
何のために、今、ここにいるのか。卓球をしているのか。卓球を指導しているのか。教師をしているのか。そこがポイントだ。
勝つことが一番の目指すことではない。勝つことの先に目指すものがあるはずである。
わたしが、いつも手に取るスポーツ指導者の本はそこに触れられている。
(勝たなくていいと言っているのではない。その先を目指すことで、勝つことができるようになってくるということだ)。
よい本なので2つだけ、あえて要望というか、批判めいたことを書いておこうと思う。
1つ。
時間の流れがあいまいなことが残念だ。
作者の過去のエピソード中心に語られていく。その内容はとても興味深いのだが、出てくるエピソードが時代順ではない。つまり、若い時の著者の指導と中堅の時の指導がわからない。そして、アメリカに行った後、自分は変わったと書いているが、そこでどのように変わったのかがあいまいである。作者の今までのやってきたことが横並びで書いてある。そこが少し残念だ。
なぜなら、本の内容にもあるが、初任者時代の自分の指導は反省ばかりと書いてあり、しかし、初任者の頃の指導を書いている。悪い例として対比的に書くのはいいだろうが、読んでいると、特段、そのエピソードをどのように扱ってよいのかがわからない。
2つ。
子どもと接する時間を長くするようにという話の中に、事務的な仕事は子どもたちが帰ってから、勤務時間がおわってからすれば良いというような、直接的には書いていないが残業奨励の文章が書いてある。これは、私的には非常に残念だ。それは、退勤時刻までにはなかなかしごとが終わらないのはわかる。また、民間の企業はそれ以上に平気で退勤時刻を超えて仕事をしている(させられている)人がいるのもわかる。だからといって、退勤時刻を超えてまで仕事をすることを奨励するのはどうだろう。
たまにネット上で、◯時まで仕事していると、退勤時刻を大幅に過ぎてまで仕事をしていることを日常にしている人、そして、それを誇りに思っているようかの発言をしている人がいるが(考え方は様々だけど)そうじゃないだろう!と言いたくなる。
ととと、最後に長めに批判ぽいことを書いてしまっているが、総じて、素敵な本だ。
子どもたちとの接し方、付き合い方に光明が見られる本である。